ARE YOU COLABORY? 研究の現場で聞いてみた!!!

第一線で活躍される研究者、研究支援者に「コラボリー/Grants(研究助成)」を実際に使って頂き、その感想を伺う本企画。 今回、レビューをして頂いたのは、「独立行政法人産業技術総合研究所」の主任研究員として、集合知の研究に取り組むほか「ニコニコ学会β」実行委員長なども務める江渡浩一郎さんです。

コラボリー/Grants(研究助成)を実際に使ってみて、その感想をお聞かせください

すごくいいんじゃないですか。自分の研究に適合した助成金の情報を検索するのはなかなか難しいし、ここまでまとまっているものはなかったので、意味があると思いますよ。網羅度が高いし、横断的になっているので、今までのものよりも確実に見やすくなっていると思います。

私自身は産総研の研究員なので、助成基金の公募情報を探すのに、所内の情報システムを活用することができます。「コラボリー」に近い情報収集の環境がすでにあるといえるので、ある意味、恵まれていますが、所内の情報システムは網羅的ではないんです。

例えば、人文系の情報は予め投稿されないようになっています。僕の研究領域は横断的なので幅広く情報を見たいのですが、そうした情報が含まれていない。もちろん役に立っていないわけではないのですが、「コラボリー」のようなサービスを使えば、明らかに情報は増えますね。

江渡浩一郎氏の写真

また、所内の情報システムは、掲示板に情報がずらっとあるだけなので、 全てのタイトルを見て探していますが、「コラボリー」のように検索機能があると便利ですね。ただ、「これでライバルが増えるな」という思いもあります(笑)。でも、それは悪いことではないですから、たくさんの人に実践してもらいたいです。

若手の研究者や学生、修士や博士の方に使ってほしい

このサービスを誰に使ってほしいですか?

若手の研究者や学生、修士や博士の方に使ってほしいですね。助成金へ応募したことがない人や、応募してみようと思っている人の参考になればいいでしょうね。

江渡浩一郎氏の写真

あとは、助成金の対象になりづらい人文系などの研究をしている人でしょうか。バイオや材料の研究をしている人は助成金を探しやすいと思うのですが、主要な分野から外れた研究をしている人は、自分の研究に適合した助成金があることを知らなかったり、研究者同士のネットワークの輪から外れている可能性も高いので、そこに「コラボリー」のようなサービスが入ることで、新たな研究に取り組むきっかけになるケースがあるかもしれません。

学会、勉強会を支援しながら、人のつながりをつくっていくプラットフォームがあってもいい

あれば便利と思われる情報や機能はありますか?

過去の採択情報の詳細、報告書などが見られるといいかもしれませんね。あと、学会開催に関わる費用の助成金のような、公募の一覧に載りにくい情報が検索できるようになるといいです。たまに、「国際会議の実施に必要な資金の半分を助成します」といったものがありますが、こういう情報はすごく重要だと思います。

「コラボリー」の最終的なゴールは、「研究者の人だまりネットワークをうみだすこと」だとさきほど仰っていましたが、そのビジョンからしても、学会や勉強会、学びを支援するのは面白いと思いますよ。すでに学会や勉強会のリンク集などはたくさんあって、それはそれで楽しいのですが、別の切り口があるような気がします。この分野はマーケット飽和状態になっていないですよね。

たとえば、月に一度、面白い人を呼んで講演をする「所内講演会」というのがありますよね。僕もいろんな会社に呼ばれてよく話をするのですが、こういう場で交流が生まれて、今度は僕が面白い人を紹介したり、されたりします。人のつながりをつくっていくのによくあるパターンですが、学会、勉強会を支援しながら、人のつながりをつくっていくプラットフォームがあってもいいかもしれません。

江渡浩一郎氏の写真

研究助成・産学連携というと公的機関のサービスという印象がありますが、民間事業者のサービスに期待することはありますか?

一言でいうと、企業には広い意味での「目利きの役割」が期待されると思いますよ。今すぐには芽が出ないけどいいところを狙っていたり、将来的に可能性がありそうな研究者を、企業が無理のない範囲であと押ししてくれると嬉しいでしょうね。

大きな額でなくてもいいので、そういう研究者をサポートする助成金をつくったり、企業が創設した賞をつくるといった動きがあると、研究者の側からするとやりやすくなる。民間企業での評価が組織内の評価につながりますから。

これは学会という専門家集団の評価を元に、研究の成果を世に出していくという本来の順番とは逆ですし、大学なり、研究機関の役割は、企業が評価できないことを研究することにあるのですが、現状ではそこが機能不全を起こしている面があので、それを補完する役割が外部に必要になっているのです。

コラボレーションは本当に重要なのか?

あなたにとってのコラボレーションとはなんですか?

研究に関する長い歴史観からすると「コラボレーションは本当に重要なのか?」という視点もあります。 専門的な職業として研究が確立した経緯を考えると、同じ専門の研究者を一カ所に集めて専門性を高めるということをやってます。これは逆にいうと多様な研究者との出会いを起きにくくしたということです。つまり、ある意味研究所や学会などは、専門外の人との出会いが起きにくく、専門外の人とのコラボレーションが起きにくいように制度設計をされたといえます。

しかしながら、これによる利点だけでなく欠点もあります。何百年のスパンの中で、研究者を取り巻く環境は変化しました。ビックサイエンスを経て、現在は科学の対象が圧倒的に多様化しています。それで、学際とか異分野融合と言われるようになったんですね。そのとき、その異分野の質が重要になります。これまで結びつかなかった人同士が結びつくことで生まれる価値というのがあって、現在の新しい価値はそこからしか生まれないんじゃないかと思ってます。

ただ詳細に見れば、科学における新しいインスピレーションは、最初から異質なものとの出会いで生まれているという面があります。一人で研究しているように見える研究者でも、ある意味自然法則とコラボレーションしているわけですよ。そう考えると、自然法則が意味する対象が広がってきていて、人間同士の社会的な営みも自然法則の一部に取り込んでいって、そのような自然法則としてのコラボレーションが研究対象になっていったと見るのが正しいのではないかと思っています。

コラボリー/Grantsは人文系の研究に利用できる助成プログラムも多数収録しています。
江渡浩一郎氏の写真
撮影:Yoichi Onoda

江渡浩一郎(えと・こういちろう)
ニコニコ学会β実行委員長/独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員/メディアアーティスト。

1997年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2010年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。1997年、アルス・エレクトロニカ賞グランプリを受賞(sensoriumチームとして)。2001年、日本科学未来館「インターネット物理モデル」の制作に参加。2011年、ニコニコ学会βを立ち上げる。ニコニコ学会βは、2012年にグッドデザイン賞、2013年にアルス・エレクトロニカ賞を受賞するなど高い評価を受ける。産総研では「利用者参画によるサービスの構築・運用」をテーマに研究を続ける。主な著書に『パターン、Wiki、XP』、『ニコニコ学会βを研究してみた』、『進化するアカデミア』。
ホームページ:http://eto.com/

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